手術の習得

いつまでにどのような手術を習得するか

はじめに

眼科医師が習得する手術のうち、最も一般的な手技として白内障手術が挙げられます。眼科手術を行う医療機関では、必ずと言っていいほど白内障手術が行われていますが、その多くが高齢者を対象としていますので、今後迎える高齢化社会において、患者様の生活の質を改善するための重要な手術であることは間違いありません。白内障手術は、手術を行う眼科医に要求される手術ですので、研修期間中に安全で確実な手術手技の習得が求められます。滋賀医科大学眼科では、まず白内障手術の確実な習得を目指し、様々な経験を積んだ後に専門性が要求される緑内障手術、斜視手術、網膜硝子体手術へと発展させていくことができるプログラムを準備しています。白内障手術装置や硝子体手術装置は最新の機種を揃えており、これらを用いて技術を習得します。また、近年著しい進化を遂げ、今後ますますの発展が見込まれる3Dモニターを使用したヘッドアップサージェリーも早期に導入しており、将来を見据えた教育環境が整備されています。3Dモニターを使用することにより、術者と同じ感覚で手術を見学することができるため、より密度の濃い教育が可能となります。
本稿では、初期研修の2年間、眼科入局以降の手術手技の習得について説明をします。

初期研修の2年間

― 初期研修中に眼科を選択した場合 -
外来・病棟業務を、指導医がマンツーマンで指導します。入院患者様を、術前から主治医・担当医とともに診察し、診察や検査結果の診かたを習得します。入院患者様のほとんどは手術を予定しているので、様々な手術症例を担当することになります。手術については、まずは手術第二助手として立ち会います。助手を経験することで、顕微鏡下における基本的な手技を習得していきます。初期研修中でも、切開や縫合といった基本的な手技は適宜行っていきます。縫合・切開の仕方を指導した後に、十分に練習を重ね、実際に執刀を行います。顕微鏡下の手技の得手、不得手がありますが、それぞれの進捗状況に応じて手術を始めていきます。

眼科医1年目、2年目

眼科医として医療に携わることを選択された先生は、本格的に眼科手術手技の習得が始まります。当科では、白内障手術、緑内障手術、斜視手術、網膜硝子体手術を中心に数多くの手術を行っていますので、担当医として病棟での診察を行い、手術第一助手として手術に立ち会います。本格的に執刀を開始する前に、豚眼を使って、切開や縫合、超音波白内障手術の練習を行います。手術の練習は、医局内に設置された手術用顕微鏡と白内障手術装置を使って行います。それぞれの習得状況や練習の進捗状況を確認して、白内障手術を中心に、執刀を開始します。

≪白内障手術≫

手術の工程を細分化して、パートごとに繰り返し施行しながら精度を高めていきます。白内障手術に関しては、指導した医師が細分化した工程について点数をつけて評価します。研修医一人ひとりのファイルを準備し、手術室に置いておきます。評価項目は約30項目になりますが、執刀ごとに指導医が各項目について点数をつけていきます。ファイルを確認することで、研修医自身が進捗状況を確認することができるだけでなく、指導医が重点的に指導する必要がある項目を確認することができます。この研修を2年間積み上げていくことによって、白内障手術の習得が可能になります。後期研修1年目終了時には、全行程を一人で施行できるようになっていることを目標としています。

≪斜視手術≫

斜視手術は切開、縫合、切腱、筋の縫着といった工程が経験できる、眼科の基本的な手技が詰まった手術です。開講以来、当科は斜視を専門分野の一つとしてきました。その過程で蓄積された診断方法や手術適応、手術手技の一つ一つを習得していきます。後期研修中に単独で斜視手術完投を目指すことはしませんが、要所要所の手技を習得することができます。

眼科医3年目、4年目

関連病院での研修を行います。大学病院は特殊な病気をみる機会が多い反面、結膜炎や霰粒腫をはじめとする一般的な疾患を診察する機会が限られます。関連病院では、大学病院では経験する機会が少ない疾患を診る機会が増えます。また、自身が主治医として自身で診察、判断し、治療をしていきます。もちろん困った際には上級医からの指導を受けることができます。白内障手術についても、関連病院では医長の先生の指導の下、数多くの症例を経験していきます。霰粒腫や麦粒腫、翼状片などの手術も経験していくことができ、手術手技に幅ができていくのがこの時期です。

眼科医5年目以降

大学病院に戻るか、関連病院に残るかを選択します。大学病院に戻る場合は、網膜、緑内障、斜視・小児のいずれかのチームに入り、自分の専門分野をもつようになります。緑内障手術、斜視手術、硝子体手術の執刀を開始するのもこの時期です。専門分野をもつと責任感が増し、手術のバリエーションも広がるので、とても充実した時間となります。研究に興味がある人は大学院に入り、専門分野の研究を始めていきます。関連病院に残る場合は、臨床の最前線で手術手技に磨きをかけていきます。その後は、難治症例を含めて多くの診療経験を積んでいき、入局10年目くらいになると、本当の意味で一人前の眼科医になります。どのような症例でも自分の力で対応でき、後輩の指導や手術のリカバリーもできるようになります。

最後に

手術は決して簡単なものではありません。基本的な手技の習得はもちろんですが、手術に対する考え方や手術の組み立て方を、一つ一つ習得していくことで、安全で確実な手術を行うことができます。当科での研修がその一助となることを願っています。

お問合せ先

滋賀医科大学眼科学講座

e-mail : (柿木まで)
TEL:077-548-2276 
FAX:077-548-2279

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